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高機能材料第1研究室
JAERI-Conf 2001-005, 273 Pages, 2001/03
本シンポジウムは、昨年の2国間研究協力相手国5か国のみを対象とした天然高分子の放射線加工ワークショップに引き続き、範囲をその他のアジア地域関連国まで拡大して開催したものである。会議では、放射線分解した多糖類の植物成長促進効果や抗菌作用,創傷被覆剤としてのハイドロゲル,タンパクアレルギーを起こさないゴム手袋の製造などに関する成果が報告され、それぞれの天然高分子の放射線処理による新機能発現に関して、国内外参加者から強い興味が示されるとともに活発な意見交換が行われた。また、今回のシンポジウムでは、アジア各国の要職にある研究者も招へいしたため、天然高分子の放射線処理による新機能発現に関する成果報告のみならず、アジア各国の放射線処理に関する研究の現状や国際協力のあり方などについての意見交換を行うことができた。本ワークショップには国内外の研究者80名(外国人20名,国内28名,原研32名)が参加し、アジア諸国8か国から17件,原研から10件,外部機関からの招待講演2件の講演を行った。本論文集、シンポジウムで発表された論文等を収録したものである。
諏訪 武
JAERI-M 8529, 180 Pages, 1979/10
放射線重合法により、乳化剤を添加することなく水媒体中で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ラテックスを合成しうるという興味ある事実を見いした。安定なラテックス状でしかも高分子量(210以上)のPYFEを得るために、重合挙動、ラテックスの安定化機構とその安定性、および得られたPTFEの融解・結晶化挙動について系統的に研究を行った。PTFEは照射線量率/モノマー仕込み量の比が大きい場合に安定なラテックス、小さい場合には不安定なラテックスで生成する。ラテックスの安定化は主として照射によって生成したポリマー鎖末端のカルボキシル基およびフッ化水素とOHの吸着による。また、ラジカル捕捉剤を添加することにより高分子量のPTFEを得た。また、PTFEの結晶化熱から分子量を求める方法を見いだした。
諏訪 武; 渡辺 光崇; 瀬口 忠男; 岡本 次郎; 町 末男
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 17(1), p.111 - 127, 1979/00
PTFEラテックスの粒子径、粒子数および粒子径分布を電子顕微鏡と自動粒径分布測定機(遠心法)を用いて測定し、反応条件との関係を明らかにした。電子顕微鏡写真から、PTFEは反応開始後5分ですでに粒子形成していることが認められた。粒子数(np)はポリマー鎖と水あるいはモノマーの放射線分解によって生成したイオン種との相対的濃度によって決定される。すなわち,初期のモノマー仕込み圧力と線量率との比によって決定される。粒子数の反応時間依存性は3つの場合がある。Case I, dn/dt=0、Case II,dn/dt0、Case III, dnp/dt0に分類される。重合反応の場は、反応初期を除けは、Case IとIIでは、水相に分散したポリマー粒子表面が主であり、Case IIIでは重合中、継続的に粒子が生成していることから、主に水相であると考えられる。
諏訪 武; 渡辺 光崇; 岡本 次郎; 町 末男
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 17(1), p.129 - 138, 1979/00
この反応系において、重合と同時にフッ酸(HF)が生成する。HFの生成速度は、反応初期において、TFEモノマーの圧力および線量率が高いほど大きく、また重合によってモノマーが消費されるにつれて低下する。このことから、HFの生成は照射下におけるTFEと水との反応によるものが主で、重合中生成したポリマーの崩壊によるものは小さい。また酸素添加量に比例してHFの生成量は増加する。HFの生成がTFEと水の放射線分解によるprimary radiculs(H°,OH°,Eaq)との反応によってのみ生ずると仮定すると、HF生成のG値、G(HF)alcは11.25となる。一方実測値から求めたG(HF)xpは、線量率が1.410rad/hr以上、圧力20kg/cmの場合計算値より1桁大きな値を示した。このことからHFの生成はモノマーのC-F結合の切断によるF°と水との反応による寄与のほうが水からのH°、OH°およびEaqによる寄与より大きいことを明らかにした。
諏訪 武; 渡辺 光崇; 岡本 次郎; 町 末男
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 17(2), p.503 - 516, 1979/00
乳化剤不在下の放射線乳化重合で得られたポリテトラフルオルエチレン(PTFE)ラテックスの安定性を検討するために電気泳動による電位の測定および電導度滴定を行った。放置安定性は線量率よりむしろ全照射線量に依存し、次の領域で安定なラテックスが得られた:logD0.026V-0.6 ここでDは照射線量(10rad)、Vはラテックス中のポリマー濃度(g/l)である。安定性はモノマーが充分存在する重合中にのみ増加する。ラテックス粒子の電位は重合したままの状態(PH3)では-25~-50mVであり、PH10では-50~-65mVと安定性はアルカリ側で増加する。また表面電荷密度は水の放射線分解のG値から計算した値より電導度滴定による実測値の方が大きい。上の結果から粒子表面に酸が依存することは明らかである。これらの酸はカルボキシル基と吸着したフッ酸であると推測され、安定化はこれらの酸およびOHによるものである。
諏訪 武; 渡辺 光崇; 岡本 次郎; 町 末男
高分子論文集, 35(4), p.237 - 243, 1978/04
被引用回数:1このラテックス粒子表面は負の電荷を帯びており、電位のPH依存性と電導度滴定の結果からポリテトラフルオルエチレン(PTFE)粒子表面に酸が存在することが明らかとなった。重合反応機構から考えて、これらの酸はポリマー鎖末端に生成したカルボキシル基と粒子表面に吸着したフッ化水素(HF)であると推測される。ラテックス粒子の安定化は主に、これらの酸と水の放射線分解により生成したOHによるものと考えられる。疎水生粒子の分散安定性の理論(DLVO理論)に基づいて、このラテックス粒子間のポテンシャルエネルギー曲線を求め、実際に観察される現象と対比させたところ良く一致した。kcl濃度が110mole/l以下であれば、この曲線の山は50kT以上ある。またこのラテックスはポリマー濃度60wt%程度になっても凝集しない。このことはエネルギー曲線の結果とよく一致する。
諏訪 武; 渡辺 光崇; 岡本 次郎; 町 末男
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 16(11), p.2931 - 2944, 1978/00
テトラフルオルエチレン(TFE)の放射線乳化重合の研究中、乳化濃度ゼロの場合にも生成ポリマーが水中に安定に分散したラテックス状で得られることを見出した。そこで、撹祥速度(200~700rpm)、n-ヘキサデカン(0~5ml)、線量率(0.5710~310Rad/hr)、圧力(2~25kg/cm)、温度(30~110C)によって重合速度、分子量およびラテックスの安定性等がどのように変るか検討した。重合速度は線量率1乗、圧力の1.3乗に比例し、70C付近で最大となる。分子量は10~10で、70C付近で最大となる。また線量率依存性は小さく、圧力の増加と共に増大する。重合中ラテックスの凝集が起こると、重合速度が低下することから、この反応はおもにポリマー粒子表面で進行しているものと考えられる。反応初期における重合速度の加速および分子量の増大現象から、ポリマー粒子中の生長鎖ラジカルの停止反応は小さいものと考えられる。
村田 幹生; 秋山 勇; 浅野 善江; 池沢 芳夫; 吉田 芳和; 松本 昌志*
保健物理, 11(3), p.207 - 210, 1976/03
放射性じん埃サンプリング用として広く用いられているセルロース・アスベスト系濾紙(HE-40)の改良型として、セルロースガラス系濾紙HE-40Tが試作された。この実用性を調べるために、捕集効率、圧力損失、表面捕集性能および機械的強度の点からHE-40濾紙と比較検討した。 試験の結果、HE-40TはHE-40濾紙に比べて約1/3の小さい圧力損失でありながら、効率と表面捕集性能がほぼ同じであること、機械的強度も実用できるに十分であることがわかった。これらの結果から、HE-40T濾紙を現場のモニタリングに用いることによって、HE-40と同じ捕集製能を維持しながら、吸引ポンプの負荷を大幅に低減することが可能となる。
諏訪 武; 中島 隼人; 武久 正昭; 町 末男
Journal of Polymer Science; Polymer Letters Edition, 13(6), p.369 - 375, 1975/06
著者らはエチレンの放射線乳化重合について研究してきた。その一環として、乳化剤を全く用いないCH-HO系で重合を試みたところ非常に安定なラテックスが得られた。重合反応は50C以下になると気相でも起こるが、70C以上ではほとんど液相で反応が進行する。またラテックスの形状は、50C以下では扁平な球であるが70C以上では球状粒子(約2000A)である。このラテックスはPH3以下になると不安定であるが、アルカリ性に対してはPH12以上になっても安定である。水の放射線分解で生成するイオン種はH、OHそれにeaqである。HClで伝導度滴定したところ当量点が出現した。ポリマー粒子表面にOHが吸着していると仮定して表面電荷密度を計算したところ1.5010coulomb/cmで、これは妥当な値である。このように疎水性ポリマーが乳化剤の存在しない系で安定に存在できることは非常に興味深い。
池沢 芳夫; 村田 幹生; 大畑 勉; 吉田 芳和; 松本 昌志*
保健物理, 8(3), p.145 - 152, 1973/03
9種類のじん埃サンプリング用炉紙の捕集効率が、単分散ポリスチレン・ラテックス・エアロゾルに対し前方散乱型ホトメータを用いて評価された。そのエアロゾルは、直径が0.091,0.198,0.365,0.500および1.099mの5種類で、面速範囲4.2~200cm/secで試験炉紙に流通させた。Toyo No.660,Toyo No.60およびToyo No.LP炉紙は、面速10~80cm/sec,および粒径0.1~0.5mにおいてそれぞれ最小効率を示した。Toyo No.5AおよびWhatman No.41炉紙の捕集効率は100cm/sec以上においてすべての試験粒径に対し95%以上であった。またToyo HE-40,HV-70,Toyo GB-100およびGelman E炉紙は99%以上の高効率を示した。単一繊維理論による炉紙の捕集効率、および隣接繊維の相互干渉効果についても検討した。